日本神経感染症学会
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ガイドライン

II.単純ヘルペス脳炎の診断基準(小児)

1.急性脳炎を示唆する症状・症候を呈する[症状の項を参照].

2.神経学的検査所見

(1)神経放射線学的所見にて,通常,側頭葉・前頭葉など,新生児では後頭葉に病巣を検出する.

  • A.頭部コンピュータ断層撮影(CT)
  • B.頭部磁気共鳴画像(MRI)

(2)脳波:ほぼ全例で異常を認める.局在性の異常は多くの症例でみられるが,周期性一側てんかん型放電(PLEDS)は急性期に一部の症例で見られるに過ぎない.

(3)髄液所見:通常,髄液圧の上昇,リンパ球優位の髄液細胞増多,髄液蛋白濃度の上昇,および髄液糖濃度は正常を示すことが多い.また,赤血球やキサントクロミーを認める場合もある.

3.ウイルス学的検査所見(確定診断)

(1)抗ウイルス剤開始前の髄液を用いたpolymerase chain reaction(PCR)法によるHSV-DNA検出

(2)単純ヘルペスウイルス(HSV)抗体測定による診断

A.髄液HSV抗体価の経時的かつ有意な上昇※があり,また,髄腔内抗体産生を示唆する所見†がみられること.

(3)髄液からのウイルス分離は稀である.

上記の1,2から単純ヘルペス脳炎を疑う症例を「疑い例」,3のウイルス学的に確定診断された症例を「確定例」とする.

注釈

※判定に当たっては,抗体測定方法と測定結果表示法に留意する.CF,NTなどでの2段階希釈法による表示抗体価の2管以上の上昇を有意の上昇とする.ELISAでの吸光度測定結果の直接表示,ELISAでの吸光度測定結果の任意的単位による表示では有意差の判定,髄腔内抗体産生の判定には慎重を要する.

†血清/脊髄液抗体比≦20 または

抗体価指数=脊髄液抗体/血清抗体÷脊髄液アルブミン/血清アルブミン≧2

文 献

  1. Whitley RJ, Soong SJ, Linneman C Jr, et al : Herpes simplex encephalitis. Clinical Assessment. JAMA 247 : 317─320, 1982.
  2. Lakeman FD, Whitley RJ : Diagnosis of herpes simplex encephalitis : application of polymerase chain reaction to cerebrospinal fluid from brain-biopsied patients and correlation with disease. National Institute of Allergy and Infectious Diseases Collaborative Antiviral Study Group. J Infect Dis 171 : 857─863, 1995.
  3. Ito Y, Ando Y, Kimura H, et al : Polymerase chain reaction-proved herpes simplex encephalitis in children. Pediatr Infect Dis J 17 : 29─32, 1998.
  4. Ito Y, Kimura H, Yabuta Y, et al : Exacerbation of herpes simplex encephalitis after successful treatment with acyclovir. Clin Infect Dis 30 : 185─187, 2000.
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